台北まであとわずか
もう台北まであとわずかの所にいる。
本日は「千と千尋の神隠し」の舞台になった九分(ニンベンに分)、テレサテンのお墓、淡水とまわり、その後はどうするか決めていない。
明後日9/10は帰国だ。
台北に入るか、どこか手近な所で宿を探すか、はたまた結局これまでやっていない台湾初野宿をするか。
とりあえず進みながら考える事にする。
朝9時、遅めの時間にだらだらとホテル出発。
宜蘭から30分位の所にある礁渓(ジャオシー)駅に行き駅前に常設されている無料の足湯へ寄る。
こういう時ビーサンだと楽だ。
まだ9時だからか我々以外には誰もいなかった。
礁渓温泉には風呂ももちろんあるのだが、足湯のみで満足し早々に出発する。
海岸線を走る。
昨日ほどではないが、またワインディング。
昨日よりも高速コーナーが続き、車が速過ぎて怖い。
交通量は昨日の道と比較するとだいぶ少ない。
大事件発生!
ここでこの旅で最大の事件発生。
これまでワインディングでは、いつも自分が先行して飛ばしまくり、分かれ道などのポイントでY氏を待つという走り方をしてきた。
次の目的地は九分(ニンベンに分)なので、その分かれ道の道先案内板がある所で待っていた。
運の悪い事にその場所はちょうど工事の為、交互通行になっていて、交通誘導員に停止させれたトラックなどが長い列を作っていた。
その為、路上停車が少々危険だったので、やむなく反対車線の路肩に止まってY氏を待っていた。
ここでY氏を待っていた
Y氏は車のすり抜けはほとんどやらないし、ちょうどガソリンスタンドの前なので、そろそろガソリンが少なくなっているY氏も気づくだろうと思っていた。
待ち始めて十数分後の事だった。
交互通行で並んだ車の隙間をすり抜けするY氏がちらっと見えた。
Y氏はすり抜けに必死で全然こちらを見ていない。
おいおい、と思っているうちにY氏はするすると通り過ぎてしまう。
自分は荷物をおろしているし、反対車線に止まっていた事、また工事で車が列になっていた事ですぐに追う事ができなかった。
またY氏も道の間違いに気づきすぐ戻ってくるだろうと予想したのもあり、追わずにそこで待つ事にした。
しかし・・・待てどもY氏は来ない。15分・・20分・・30分・・・おかしい・・・結局50分待ったが戻ってこない。
九分(ニンベンに分)に行くには、この分かれ道を通るはずなのに。
別ルートで九分(ニンベンに分)に行った可能性も考え九分(ニンベンに分)に向かう。
ほどなくして九分(ニンベンに分)に到着したが、これまでの観光地で一番の人出。
台北から日帰りできる距離だし、さすが超有名観光地。
人が多すぎることから、Y氏が来てるとしても、ここで彼を発見する事は困難と判断。
しかもバイクを停めるのも有料だったりする。
日本の観光地っぽい。
日本人観光客らしき人も大量にいる。
ただの勘なのだが、Y氏はここにいない気がする。
とりあえずバイクで通過しながらY氏のバイクが泊まっていないか確認する。
観光は数枚写真を撮ったのみ。
台北から近いのだから、来ようと思えばいつでも来れるし。
道を何度か往復して探すが、こんな混雑では探しようもないし、いそうな気もしないので次の目的地のテレサテンのお墓に行ってみる事にする。
しかし、ここで問題発覚。
今日はY氏がすべての地図を持っていた。
地図は特にどちらが持つと決めてはおらず、毎日なんとはなしに、どちらかが持っていた。
今日は運の悪い事に自分のもとに1冊も地図がない。
道路地図2冊ともと、さらに地球の歩き方Y氏のもとにあった。
全部の地図を片方が持っていた状況は、今まででも今日だけ。
なんと間の悪い状況。
とりあえず次の目的地で会える事を期待し、テレサテンのお墓のある近くの町の金山まで行ってみる。
昨日の夜地図を見ていて、金山という町の名前を覚えておいてよかった。
だいたいの場所も覚えている。
しかし、途中の基隆の街で1時間位迷う。
道がいままでの町以上にごちゃごちゃしていて、同じ所を何度も通ってしまう。
地図がないのでプロトレックの方位磁石と、道行く人に聞いてなんとか海沿いの道に出た。
なんとか記憶と標識を頼りに金山の町まで来れた。
金山の町の入り口辺りにあるセブンイレブンのイートインで外を見ながら休憩。
ここはテレサテンのお墓に行く場合、必ず通過すると思われる。
しばらくセブンイレブンでY氏が来ないか張り込む。
店内に長時間いても何も言われないので台湾のコンビニはとても便利だ。
セブンイレブンなのでWiflyのWifiが使用可能。
やっと地図が見られる。IPHONEでテレサテンのお墓の場所を確認。
ここから5、6キロありそうだ。
しかも田舎道を行く必要があり迷いそうな予感。
Wifiがなければ地図は見れないので、いつでも見れるように画面をキャプチャしておく。
しかしながら地図があっても迷いそうな道だ。
完全な地元道のような感じ。
自分は地図がなくてもセブンイレブンのWIFIで何とか情報収集できるし、中国語も多少できる。
Y氏はIPHONEも持っていないし、中国語もできない。
幸いな事に地図だけは彼が持っているが。
金山のセブンイレブンで1時間待ったが、彼はここを通過する事はなかった。
仕方ないのでテレサテンのお墓に行ってみる。
もしかしたらY氏が待っているかもしれない。
途中何か所も「テレサテンのお墓はこちら」のような案内板があったので助かった。
おかげでほとんど迷わずにたどり着く事ができた。
どこにもいないY氏
テレサテン(鄧麗君)の墓地がある金宝山に到着。
墓地内は広大な敷地で、静かでいい感じだった。
平日という事もあってか人がほとんどいない。
Y氏もいるようには思えない。
噂どおり、遠くにテレサテンのオルゴール調の曲が聞こえる。
しかし、さっきIPHONEで地図しか見なかったので、テレサテンのお墓はどんな物なのかわからない。
たくさんのお墓の中のいったいどれが?
Y氏を探す目的もあるので墓地内をバイクで走り回る。
かなり広い。結局テレサのお墓もわからないし、Y氏もいない。
テレサのお墓はもう諦めた。
とりあえずここには来たし、来たって事が重要だ。
いつまでもここにいても仕方ない。Y氏を探すためにも先に進む事にする。
現在、時刻は16時。
そろそろ今晩どうするかを決めていないと不安になる時間帯。
どうしよう。
Y氏はいったいどこにいるのだろう。
もう台北は目と鼻の先。
当初の計画でも、九分(ニンベンに分)、テレサテンのお墓、淡水と周り今夜には台北入りする予定だったが今晩の宿はどうするかを、まったく計画していなかった。
行き当たりばったりで何とかなるだろう、と思っていたのが間違いだった。
しかしながら台北でバイクを返却する時にはバイク屋で必ず会えるはずだ。
それを考えると心配する必要はないかとも思うが、実はそう簡単な話ではなかった。
バイク屋には13日まで延長して返却すると連絡してあるのだが、数日前にY氏と相談し帰国日を繰り上げ、14日から10日に変更していた。
普通に考えれば9日にバイク屋に返却するとは思うが、二人でそこまで詳細に相談していないので、場合によってはY氏は今日バイクを返却してしまう可能性もある。
そうすると事態は更にややこしくなる。
帰国便の支払いはY氏のカードでの支払いなのだが、チェックインの時にカード名義人がいないとチェックインできない、とエバー航空のHPに書いてあった。
Y氏が今日バイクを返却してしまうと、再会のチャンスは空港でしかなく、それを逃すと飛行機に乗れない。
再度チケットを買わなければならない事態になってしまう。
更に問題はあり、自分がIPHONEでチケットを購入したのだが、予約番号、航空券番号とも自分が管理しており、Y氏は番号を知らない。
恐らく正確な出発時刻なんかも覚えてないだろうし、最悪帰国日すら覚えてないかもしれない。
それに、彼のお金も残り少ないはずだ。
彼は中国語がまったくできない。
まさかどこかで事故にでもあったのか。
さまざまな事が脳裏を駆け巡るが、今となってはどうしようもない。
途中、白沙湾というY氏の好きな墾丁を思わせる名前のビーチを見つける。
もちろんここにもいない。
もしかしたらY氏が来るかもしれないと思いビーチで時間をつぶす。
1時間くらいで日が暮れ辺りは暗くなってきた。
ここで台湾初野宿をしようと考える。
しかしながら太陽が沈むとかなり寒くなってきた。
デートスポットのようでカップルが多く来る。
ここでテントを張るのは少々躊躇われる。
マットだけで寝るにはちょっと寒すぎた。
よし、台北に行ってしまおう。
ここから台北までは約40km。
距離としては楽勝の距離だ。
あまり夜に台北は走りたくなかったがそうも言ってられない。
ちなみに地図はコンビニで買って入手済み。
台北に近づくにつれバイクの数が激増してくる。
とにかく台数が多いので、周囲のバイクの動きに気を配るのが大変。
やはり台北は、台湾の中で一番バイクの運転が荒いと感じた。
そういうと、日本みたいに信号待ちから全開ダッシュのような状況を想像すると思うが、実はそういう人は少ない。
集団から離れたいからと、自分が一番信号待ち→全開ダッシュしてたような感じ。
荒いというより、ゆっくり走る人、右に左に進路を変える人、急にブレーキをかける人・・という感じに、周りの大量のバイクがあらゆる動きをしてるから、カオスに感じるのだろう。
逆に車の運転は台湾で一番おとなしいと感じた。
バイクをひっかけないように注意してるんだろう。
地方の車の運転の方が明らかに荒い。
途中淡水に寄ってみたが、ベイエリアって感じで自分が場違いなのと、激渋滞してたのでUターンした。
道を間違え士林夜市のメインストリートに突入してしまう。
2週間前はここでチキンを食べながら、道路を眺めていたが、今は自分がそこを走っている。
さらにしばらく走ると見覚えのある建物が見えてくる。
台北駅だ!
出発の日、台北駅地下街に寄る為、一時停めていた場所と同じ場所に偶然帰還。
19:48 台北駅前到着!
到着時オドメータ:20920km
全走行距離:1737kmという事になった。
普通台湾一周は1200km前後らしいが、寄り道などが多かったので大幅に距離が多い。
KYMCOよ、ありがとう。
無理な走りにも付き合ってくれ、根をあげずに頑張ってくれた。
初めに見た時は「ダセー」と思ったが、今はとてもいとおしい。
一人でのゴールとなってしまったが結構感激した。
長いようで短かった台湾一周ツーリングが終わった瞬間だった。
長い夜の始まり
台北に着いたはいいが、これからどうするか何も考えていない。
旅行前に計画表を作っており、こういう時の為、はぐれた場合の待ち合わせポイントを日ごとに決めていたのだが、なんと今日の待ち合わせポイントだけ決めていなかった。
計画段階でも、台北入りするかどうかは現地で決めようと思っていたのだ。
最終日(明日を意味する)の、はぐれた場合の待ち合わせポイントは台北駅。もしかしたらY氏が今日台北駅に来るかも、と思いホテルは探さず、ここで待つ事を決める。
今夜は風呂に入れないので、台北駅のトイレで顔を洗う。
排気ガスで真っ黒だ。
学生時代はツーリング中に公衆トイレで顔を洗うとか、ワイルドでかっこいーとか思ってたけど、おっさんの今となっては、ただただ貧乏臭い。
まるで不審者かホームレスだ。
台北駅周辺はバイクの路上駐車の取り締まりが厳しい。
何度も路駐バイクの強制回収トラックを目撃した。
なのでとりあえずバイクをなんとかしないと。
周辺をウロウロして、「京站時尚広場」という台北駅の道はさんだ隣のデパート地下に駐輪場発見。
デパートと共にホテルとバスターミナルが入っている建物だ。
そこにバイクを停める。
24時間やっているとの事。
バイクを駐輪場に停め、その後バックパックを台北駅のコインロッカーに放り込む。
財布などの貴重品を入れているウェストバックのみ持ち歩く事にした。
台北駅前で座り込み、Y氏とはぐれた事を台湾人の友達にメール。
台北にはそこらじゅうにWIFLYの電波があるのでセブンイレブンを探す必要もない。
友達はひどく心配していたが、とりあえず明日まで様子を見ようという事になった。
やる事がなくなった。
夜なのに蒸し暑い。
しかし台北駅構内は冷房で寒すぎる。
台北駅前でボーとして過ごす。
まもなく深夜0時。
しかし危険はまったく感じない。
この時間でも若い女の子が一人で歩いていたりもする。
新宿の路上で朝まで過ごす方が遥かに怖いと思った。
この日、念願の(?)台湾初の野宿となる。